大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

宮崎地方裁判所 昭和46年(ワ)207号 判決 1973年5月31日

原告 株式会社 さくら資金

被告 株式会社西日本相互銀行

右訴訟代理人弁護士 吉野作馬

右訴訟復代理人弁護士 佐藤安正

当事者参加人 菅沼樫材株式会社

右訴訟代理人弁護士 小倉一之

主文

被告は、原告に対し、別紙目録(一)記載の約束手形を引渡せ。

当事者参加人の請求を棄却する。

訴訟費用のうち、原告と被告との間に要したものは被告の負担とし、参加事件に要したものは当事者参加人の負担とする。この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

(当事者の求めた裁判)

一、原告

「被告は、原告に対し、別紙目録(一)記載の約束手形を引渡せ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。

二、被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決、および、「当事者参加人の請求を棄却する。訴訟費用は当事者参加人の負担とする。」との判決。

三、当事者参加人

「被告は、当事者参加人から別紙目録(二)記載の約束手形の引渡しを受けるのと引換に、当事者参加人に対し、別紙目録(一)記載の約束手形を引渡せ。参加による訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。

(原告の請求の原因)

一、原告は、訴外市川広告に対し、宮崎地方裁判所昭和四五年(手ワ)第七一号約束手形金等請求事件の判決に基き、元金二、三九六、一六一円およびこれに対する昭和四六年一一月一七日から完済まで年六分の割合による金員の支払を求める債権を有している。

二、訴外市川は、被告に対し、被告が所持する別紙目録(一)記載の約束手形(以下本件手形と総称する。)の返還を求める権利を有している。

三、訴外市川は無資力であるから、原告は自己の債権を保全するため訴外市川に代位して、被告に対し、本件手形の引渡しを求める。

(被告の答弁)

請求原因一の事実は不知。同二の事実は認める。同三の事実は否認する。

(当事者参加人の請求の原因)

一、当事者参加人は、訴外市川に対し、本件手形を振出し、訴外市川は当事者参加人に対し、別紙目録(二)記載の手形を振出したが、右はいずれも資金調達のために振出された融通手形である。

二、訴外市川は、被告から本件手形の割引を受け、被告は本件手形の所持人となったが、被告は、昭和四五年五月六日ころ本件手形債権と、訴外市川の被告に対する預金債権とを対当額で相殺したため、被告は本件手形を訴外市川に返還する義務を有している。

三、当事者参加人は、訴外市川に対し、融通手形として振出された別紙目録(二)記載の手形の引渡しと引換に、本件手形の返還を求める権利を有している。

四、よって、当事者参加人は、訴外市川に対して有する本件手形の返還請求権を保全するため、訴外市川に代位して、被告に対し、本件手形の引渡しを求める。

(被告の答弁)

請求原因二の事実は認める。その余の事実は不知。

(証拠関係)<省略>。

理由

一、昭和四六年(ワ)第二〇七号事件について

原告主張の請求原因二の事実は当事者間に争いがなく、また<証拠>を総合すると、請求原因一の事実および同三のうち訴外市川が無資力であることを認めることができ、右認定をくつがえすに足る証拠はない。

ところで、原告が訴外市川の有する本件手形上の権利を代位行使するためには、手形の呈示証券性にかんがみ、本件手形を呈示する必要があるから、原告が訴外市川に対する債権を保全するため、訴外市川に代位して、被告に対し、本件手形の引渡を求める原告の請求は理由があるというべきである。

二、昭和四八年(ワ)第七九号当事者参加事件について、

当事者参加人の主張は、要するに当事者参加人が訴外市川に振出した本件手形は融通手形として振出されたものであるから、当事者参加人が訴外市川に対して有する本件手形の返還請求権を保全するため、訴外市川が被告に対して有する本件手形の返還請求権を代位行使するというものである。しかしながら、本件手形が訴外市川の所有に帰属すべきものであることは弁論の全趣旨によって明らかであり、従って、訴外市川の債権者が同訴外人に代位して本件手形上の権利を行使したとしても右はあくまでも訴外市川の有する権利を行使しうるにすぎないから当事者参加人は訴外市川に対するあらゆる抗弁(融通手形の抗弁・相殺の抗弁等)をもってこれに対抗することができるというべきである。そうであれば、当事者参加人は本件において訴外市川の権利を代位行使する必要はないからその余の点について判断するまでもなく、当事者参加人の請求は理由がないというべきである。

三、結論

よって、原告の被告に対する請求は理由があるからこれを認容し当事者参加人の被告に対する請求は失当としてこれを棄却すべく、民事訴訟法八九条・一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 武内大佳)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例